味覚で感じるコーヒーの世界

南米のコーヒーの旅 - 味覚で感じるコーヒーの世界

味覚で感じるコーヒーの世界


あらすじ: コロンビアの農園で収穫、焙煎、挽き方を学び、コーヒー作りの苦労と誇りに触れた美咲。次なる学びは、カッピング(カップテイスティング)。カルロスに誘われ、コーヒーの香りや味を比較しながら、その奥深さを体験する。日本でバリスタとして働く美咲にとって、カッピングは新たな発見と挑戦の時間となる。

朝食を終えた美咲は、カルロスから「今日はカッピングを体験してみないか?」と声をかけられた。美咲は興味津々で、「ぜひやってみたいです!」と即答した。カッピングはコーヒーの品質や風味を評価する重要なプロセスであり、バリスタとしての成長に繋がると期待していた。

カルロスに連れられ、農園のカッピングルームに入ると、そこには数種類のコーヒー豆が並べられ、小さなカップやスプーンが整然と置かれていた。部屋には、焙煎されたばかりの豆の香ばしい香りが漂っている。

「ここでは、収穫した豆の品質を確認するために、必ずカッピングを行うんだ。今日はこの農園の3つの区画で収穫された豆を試してみよう」とカルロスが説明した。

カッピングの準備

カルロスは、美咲にカッピングの基本を教えながら、手際よく豆を挽き始めた。挽いた豆はそれぞれのカップに分けられ、そこから立ち上る香りを美咲に嗅がせた。

「この香りが重要なんだよ。まだお湯を注ぐ前の段階で、豆のポテンシャルがどれだけ感じられるかを確認するんだ」とカルロスが言う。

美咲は鼻を近づけ、一つひとつのカップの香りを嗅いでいく。あるカップからはフローラルな香りが漂い、また別のカップからはナッツやチョコレートのような濃厚な香りが感じられた。

「同じ農園でも、区画や加工方法でこんなに違うんですね」と美咲が驚くと、カルロスは「その通りだ。それがコーヒーの面白いところさ」と微笑んだ。

お湯を注ぎ、味を体験

次に、カルロスがお湯を注ぎ、カップにクラスト(泡の層)ができるのを待つ。その間に立ち上る香りはさらに濃くなり、美咲は一つひとつのカップに顔を近づけて、その違いを楽しんだ。

「クラストを崩すときの香りは特に重要だ」とカルロスが言いながら、スプーンでクラストを優しく崩していく。美咲も慎重に同じ作業を行い、その瞬間に広がる香りの変化に驚きを覚えた。

「これは…さっきよりもフルーティーさが際立っていますね」と美咲が言うと、カルロスは「よく気づいたね。その変化こそ、コーヒーが持つ層の深さなんだ」と答えた。

味覚で感じるコーヒーの違い

いよいよテイスティングの時間だ。専用のスプーンでコーヒーをすくい、音を立ててすすりながら味わう。美咲は舌全体で味を感じ取り、それぞれのカップの違いをメモに記録していった。

1つ目のカップは、柑橘系の明るい酸味が際立つ。「これが高地で育った豆の特徴なんですね」と美咲が言うと、カルロスが頷く。

2つ目のカップは、チョコレートのような甘みとコクが感じられ、口当たりがまろやかだ。「これがナチュラルプロセスの影響だ」とカルロスが説明する。

3つ目のカップは、ナッツのような香ばしい風味が広がり、後味がすっきりしている。「これがこの地域特有の土壌の影響なんだよ」とカルロスが補足した。

美咲は一杯ごとに違う個性に感動し、「同じコーヒーでも、こんなに表情が変わるなんて…」と驚きを隠せなかった。

日本での仕事に活かす学び

「バリスタとしてどう思う?」とカルロスが尋ねると、美咲は少し考えてからこう答えた。

「日本で提供するコーヒー一杯が、ここまで多くの努力と自然の力で作られていると知った今、もっと自信を持ってお客様にお届けしたいです。そして、こうした違いを伝えることで、コーヒーの奥深さを知ってもらいたいと思いました」

カルロスは満足そうに頷き、「その気持ちを忘れないでほしい。それが、コーヒーを愛する人々の架け橋になるんだ」と答えた。

その夜、美咲はノートを広げ、カッピングで感じた香りや味の違いを整理した。

アンデス浜松
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