第3話: キト空港、そして食事の注文で…

第3話: キト空港、そして食事の注文で…

第3話: キト空港、そして食事の注文で…


慌ただしい出発からなんとか立て直した隆一は、ついに飛行機に乗り込み、南米エクアドルへと向かうことになった。空の上では、日本の景色が徐々に小さくなり、隆一は少しだけ心を落ち着かせることができた。「これからが本当の冒険だな…」と、期待と不安が入り混じった表情で窓の外を眺めていた。

飛行機は順調にエクアドルの首都、キトへと向かう。だが、長時間のフライトは60歳の体にはなかなか堪える。機内での映画もなんだか頭に入らず、何度も席を立ち、窓の外を見てはため息をつく。ようやく、フライトアテンダントが「間もなくキトに到着します」というアナウンスをすると、隆一の胸は高鳴り始めた。

キト空港に到着し、入国手続きを済ませた後、荷物を取ろうとベルトコンベアに向かう。しかし、ここでもハプニングが待っていた。自分のスーツケースがなかなか出てこない。「あれ?他の人たちはもう荷物を持って行ってるのに…」と、不安がよぎる。周囲の観光客が次々に荷物を手にして去っていく中、隆一だけが取り残されたような気分になる。

しばらく待って、ようやくスーツケースがベルトコンベアから姿を現した。「よし、これでなんとか…」とほっと胸をなでおろした瞬間、再び焦りの表情が浮かぶ。「あれ、どこに行くんだ?」そうだ、空港からホテルまでの移動を全く考えていなかったのだ。

周囲に英語が通じそうな観光案内を探し回りながら、隆一は異国の地での自分の無計画さに少し呆れつつも、「まぁ、これも経験さ…」と自分を励ます。

タクシー乗り場を見つけ、なんとかホテルまでの道を聞き出すことに成功。しかし、運転手との会話は完全にスペイン語。「スペイン語なんて全然わからないぞ…」と心の中で叫びながらも、スマホの翻訳アプリを駆使して何とか意思疎通を図る。

エクアドルの夜は静かで、涼しい風が心地よい。ホテルに無事到着し、チェックイン手続きを終えた隆一は、すでに腹ぺこ。「まずは食事だな」と思い、ホテル内のレストランに向かうことに。

しかし、ここでも大問題が待っていた。メニューはすべてスペイン語。料理の名前を見ても、どんな食べ物なのか全く想像がつかない。「何を頼めばいいんだ?」と困惑した表情でメニューを見つめる隆一。店員が「¿Qué le gustaría pedir?(何を注文されますか?)」と微笑むが、その言葉が全く理解できない。

とりあえず「これがいい」と思った料理を指差し、「これ、これ!」と言いながら注文したものの、店員は不思議そうに首をかしげる。どうやら、指差したのはドリンクメニューだったらしい。「あ、食べ物を頼みたかったんだ!」と慌てて訂正するが、言葉が通じず、店員は困った表情を浮かべる。

ついに店員が英語メニューを持ってきてくれ、ようやく事態が収まった。「ありがとう…本当に助かったよ」と、隆一は心から感謝しながら、何とか食事を注文することに成功した。

出てきた料理は見慣れないが、味は抜群。「これはうまいな…」と、思わず笑顔がこぼれる。

「いやぁ、こんなに大変だとは思わなかったけど…悪くない冒険の始まりだな。」

そう呟きながら、隆一は微笑みを浮かべた。定年後の新たな一歩を踏み出した自分に、少しだけ自信が湧いてきた。「明日はどんなことが待ってるんだろう…楽しみだな。」

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