第8話、土地と人が生む風味

南米のコーヒーの旅 - 土地と人が生む風味

第8話、土地と人が生む風味


あらすじ: カルロスとの会話でコーヒーに込められた誇りを知った美咲。翌日、カルロスは美咲を農園の中でも特に高地にある区画に案内する。そこで美咲は、土地や気候がコーヒーの風味にどれほど影響を与えるかを実感し、生産者のこだわりの背景をさらに深く学ぶことになる。

翌朝、いつも通り早起きした美咲は、朝食の席でカルロスから「今日は特別な場所に案内するよ」と告げられた。軽トラックの荷台に乗り込み、農園の奥へと向かう途中、美咲は広がる青空とコーヒーの木々の間に流れる柔らかな風を感じていた。

30分ほどの道のりを経てたどり着いたのは、農園の中でも標高が最も高い区画だった。周囲を山に囲まれ、下界よりも涼しく湿度が高いその場所には、熟した赤い実が一際鮮やかに実るコーヒーの木々が広がっていた。

「ここは、私たちの誇りの一つ、特別な区画だ」とカルロスが語り始める。「標高が高く、昼と夜の温度差が大きいこの土地では、豆がゆっくりと成熟する。これによって、酸味が強く、フルーティーな香りが引き立つコーヒーが育つんだよ。」

美咲は、手のひらに一粒の赤い実を載せながら、その一粒がどれほどの自然と人々の努力によって生まれたものかを思い巡らせた。

「標高が高い分、収穫は一層大変だ」とカルロスが続けた。「急斜面を登りながら手摘みで行うしかない。それでも、この区画の豆を飲んだ人々が喜んでくれることを思えば、その苦労も忘れるよ。」

その後、美咲は実際にその区画で収穫を体験することになった。傾斜のきつい地面に足を踏ん張りながら、熟した実だけを選び取る作業は思った以上に大変だった。途中で汗をぬぐいながらも、「これがあの一杯のためなんだ」と自分を奮い立たせた。

昼下がり、カルロスは美咲を小さな焙煎小屋に案内した。ここでこの高地区画の豆を特別に焙煎して味わってみるのだという。豆が焙煎機の中で徐々に膨らみ、甘い香りを放つ中、美咲はその香りだけでも高地の特別な風味が感じられることに驚きを覚えた。

焙煎を終えた豆をハンドグラインダーで挽き、カルロスが慎重にドリップで淹れたコーヒーが目の前に差し出された。カップを手に取り、一口飲んだ美咲は、今までに感じたことのないような鮮烈な酸味と、フルーティーな甘みが口の中に広がるのを感じた。

「これが、この区画の味か…」と美咲は思わず呟いた。

「そうだ、土地と気候、そしてここで働く私たち一人ひとりの思いが、この味に表れているんだ」とカルロスが応える。

夕方、美咲はノートにその日の出来事を記しながら、コーヒーが生まれる背景には、見えないほどの努力と情熱が詰まっていることを思い出していた。

アンデス浜松
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